興行収入歴代1位
韓国映画の『エクストリーム・ジョブ』をNetflixで見た。韓国では興行収入歴代1位になったメガヒット作品らしい。
あらすじを見てピンと来る
エクストリーム・ジョブのあらすじはこんな感じ。
昼も夜もなく駆けずり回るが、実績は最低。あげくの果てに解体の危機を迎える麻薬捜査班。リーダーであるコ班長は、麻薬を密輸している国際犯罪組織の情報をつかみ、チャン刑事、マ刑事、ヨンホ、ジェフンの4人のメンバーと共に張り込み捜査を開始する。
麻薬捜査班はその組織を24時間監視するため、彼らのアジト前にあるチキン店を引き継ぎ、偽装営業をすることに。だが、絶対味覚を持つマ刑事の隠れた才能により、思いがけず、そのチキン店は名店として名を馳せるようになる。
捜査は後回し、チキン売りで息つく暇もなく忙しくなった麻薬捜査班に、ある日、絶好の機会が訪れるが・・・。
(エクストリーム・ジョブのあらすじ)
このあらすじを見て、これってこれウディ・アレンの『おいしい生活』の韓国版リメイクかな、と思ってソースを探したけどそのような形跡は微塵もなかった。どうやらオリジナルらしい。おいしい生活のあらすじはこんな感じ。
自称・天才犯罪者のレイは、完璧な銀行強盗プランを思いつく。銀行の近くにある空き家を借りて地下トンネルを掘るというもの。だがカモフラージュとして妻が始めたクッキー店が大繁盛してしまい…。
(おいしい生活のあらすじ)
正義と悪が反対だが、アイデアとしては同じだ。
オペレーションに乗る描写が好き
パクリかどうか、オーマジュかどうかはどうでも良いが、こういう「商売がどんどん繁盛して行ってビジネスが拡大していく」系の話は大好き。一つの取引や出来事をきっかけに、初めは手探りや偶然だったステップが洗練され、オペレーションとして確立し、あとはそのオペレーションをひたすら実行すればビジネスが拡大する、という時期のあの描写がたまらなく好きだ。
例えばブレイキング・バッドでウォルターとジェシーがバンのキッチンでメスを量産するシーン。
同じくブレイキング・バッドで、ウォルターが稼いできた現金がどんどん積み上がってマネーロンダリングに四苦八苦するシーン。
ファウンダーでフランチャイジーを募集して一気に店舗を拡大していくシーン。
ドラッグ最速ネット販売マニュアルで主人公たちがドラッグの梱包と出荷に追われるシーン。
全裸監督で売れない英語教材販売員の村西とおるが営業のコツを掴んでバンバン売りまくるようになるシーン。
同じく全裸監督で北大神田書店がどんどん拡大していくシーン。
ファイトクラブでタイラーの元でスペースモンキーが拡大し“石鹸”を量産していくシーン。
ズブの素人やアウトローでも、オペレーションが正しければ、そしてそれを忠実に守り実行すればビジネスが拡大する、という合理的な事実を垣間見れる。いわゆる再現性がある、というやつ。
オペレーション3箇条を守ってくれ
エクストリーム・ジョブも同系統の話ではあるが、拡大期の描写がちょっと物足りない。チェーン展開の話が出てすぐに工場ができ、複数の支店がオープンするが、このスノーボールの初めのひと転がりをすっ飛ばしてしまっている。
- まずは偶然うまくいく
- それを体系化して再現性があるか確認する
- 再現性があることが確認できたら一気に拡大展開する
勝手な願望だが、僕としてはこういうステップを踏んで欲しい。エクストリーム・ジョブはこのステップ2が抜け落ちているので、拡大展開が唐突に思えてしまう。
ハリウッドでリメイクしてくれ
移民国家の性格ゆえか、アメリカの企業経営は基本的にオペレーションを実行すれば拡大するデザインになっている。一部の頭脳が戦略を考え、それをオペレーションに落としこみ、非熟練工でもこなせる作業に分解する。こうした思想が映画にも差となって現れる。
エクストリーム・ジョブが仮にハリウッドでリメイクされることがあったら、絶対にこのシーンはよりリアリティを持って描かれるだろう。ワクワク感、スピード感が増幅され、観客もオペレーションの一部に組み込まれたかのような一体感を生み出すあの妙。やっぱりオペレーションの描写はアメリカが強い。それを見たい。